先日、地方に出張したときの話。
夜の11時、3次会を盛り上げたのはなんとスペイン語の繋がりだった。
私はメーカー営業の仕事をしている。
先日、商社主催の展示会が開催され、弊社も出展させてもらった。
2日間の開催で、1日目の夜に懇親会が開催された。
展示会出展者同士は日頃関わりないので基本みんな初対面だが、みんな営業職のため会話に困ることはない。また、商社は各出展者と取引があるため、商社が時折場を回す。
懇親会が終わり、帰る人、2次会行く人に分かれる。
2次会組で私は若い者同士、商社とメーカーと私の3人で2軒目に行くことにした。
とは言ってもそこは地方だ。
選択肢は限られている。
全力で走れば10秒ほどの路地に、その時間でも空いてそうな5軒くらいの中から考える。考えると言っても考えたところで何も出てこないので地方特有の佇まいのスナックに入り、1時間ほど飲んだ。
どうもうまく締まらない雰囲気のままホテルへの帰り道。
3人とも「締まってない感」が漂い、示し合わせたかのように「もう1軒行きますかっ」となった。
数少ない選択肢の1つを消化してしまっている。
次に選んだ店は生憎満席だった。
残り3軒ほどだ。
その中の1軒に近付くと"Machu Picchu"と書かれていた。
あー、マチュピチュね。確かに"Perú"とも書かれている。
(実際には違う地名、違う国名だが何となく変えておく。)
商社がいきなり大きな声で言う。
「僕マチュピチュめっちゃ行ってみたいんすよー!!!」
決まった。吸い込まれるように入店。
中にはペルー出身であろうおばあちゃんとその娘とバイトの店員さん、そしてお客さんが1人いた。
商社 "Estoy borrachoooo" (酔っぱらいだぜ〜)
何、アンタ、スペイン語喋れんの?
仕事以外の話をしてこなかったため初めて知る。
私 「俺もスペイン語喋るよ」
商社 「へ?」
ペルー人の店員さんとスペイン語で話すと、商社キョトン、もう1人のメーカーもキョトン。私も彼らもお互いがスペイン語を話せることを予想もしていなかった。
とは言え、スペイン語から離れて10年近く経つため、だいぶ忘れている。商社も私も頑張って思い出しながらスペイン語を話すのがとても楽しかった。
いつしか商社はスペイン語喋るのやめ、もう1人のメーカーも一緒になって「ちょ、これ通訳して店員さんに言ってー」とか言われるが、店員さん日本語ペラペラで通訳必要ないし、なんなら私が言葉に詰まるとフォローしてくれるし、それ聞いて商社は「うわ、その単語懐かし!」とか言って大はしゃぎ。
その場を共有していない読者は何がオモロイんか共感頂けないと思うが、とにもかくもスペイン語でその場がめちゃくちゃ盛り上がったのだ。
Lo pasé genialだった。 (最高の時間だった。)
Genial(読み: ヘニアル / 意味: 最高)って何年ぶりに使ったんやろか。
スペイン語を話せる喜びを改めて実感した夜だった。
私は外国語学部出身である。
仕事に忙殺されて読書も外国語の勉強からも遠ざかっているが、言葉が好きだ。
思わぬ形で同郷の人と会うと親近感が湧くと思う。その中には「同じ言葉を話す」と言う側面が大いにあると思っている。そして言葉には文化が内在する。
スペイン語ネイティブじゃないくせに、スペイン語には特別な愛着があり、スペイン語を話す人には同郷意識に似た感覚を持つ。英語ではないところが余計にそうさせるのかも知れない。
大盛りあがりのまま1時の閉店まで飲みに飲んで寝不足のまま展示会2日目を迎えたが、楽しいひとときのおかげでとても清々しい朝だった。
今でも思い出すと、あの夜の陽気な雰囲気が甦る。
言葉って本当に面白い。
折角なのでここ数日ずっと聴いているスペイン語の曲を紹介しておく。
"Andas En Mi Cabeza"
by Chino y Nacho ft. Daddy Yankee