「出て行く身なので、ぶっちゃけて言いますけど...」
私の上司の上司の上司にあたる結構偉い人が、お客様のかなり偉い人に対してお客様社内の事情に対して苦言を呈した。
「すげぇ、それ言っちゃったよ」同席した私は感嘆した。
『言いにくいことを言う』
私はBtoBの営業職をしているが、『言いにくいことを言う』ことが営業としての大事な役割の1つ考えている。
なぜそう考えるようにしているのは後述するが、「言いたかないが、まぁそれが自分の役割やからしゃーない」と割り切るためでもある。
これは家庭内でも通ずるところがある。
『言いにくいことを言う』
仕事上では以下のように色んなモードがある。
- お客様のためにお客様に
- お客様のために社内に
- 社内のためにお客様に
- 社内のために社内に
今回のエピソードは「1」と「3」にまつわることだった。
お客様への転勤挨拶
私の上司の上司の上司、面倒くさいので「A部長」とする。
A部長が転勤することとなり、古くから付き合いのあったお客様の専務(以下、「O専務」)に挨拶に行こうとしたが、当方が行ける日は予定が合わず、半ば諦めかけていた。
しかし、結果的に遠いところ、それも朝早くにご来社いただくことになった。
ご来社頂いたので他のマネージャークラスも社内にいたが、その人達はお出迎えだけに留めて退室頂いて、新・旧部長と私の3人で対応こととなった。
A部長の転勤のこと、後任の紹介や、A部長との思い出話に華を咲かせる内に、A部長の次の予定が近づいてきた。
このまま和やかムードでお別れかなっと思ったその時だった。
お客様に切り込む部長
「出て行く身なので、ぶっちゃけて言いますけど...」と切り込み、詳細は伏せるがお客様社内のとある事情に苦言を呈したのだ。
「ぅお、それ言うんか!」私は驚いた。
私は担当として何度も足を運ぶお客様なので、その「事情」に結構困ってて、少なからずストレスも受けていた。しかしお客様には言えないし受け入れざるを得ないものかと思っていた。
真摯に受け止めるお客様
その苦言を一通り話してO専務はどう返すのか、、、
「Aさん、言っていただいてありがとうございます。こちらもぶっちゃけて言うと、(私の方を見て)誰にも言わないでね、その事情は私も把握していてどうしたものかと考えていた。」
「他のメーカーからも同じこと言われて、これはメーカーみんなが思っていることだと認識した。メーカーとの関係を立て直すためにも考えないといけない。」
そのような言葉を仰られ、理解し受け止めてくれた。
大人やなぁ。
きっと、A部長は「お客様のためにお客様に」『言いにくいことを言った』のだと思う。お客様が今後もメーカーとともに成長していけるように。
しかし、私としては私が言いにくいことを代わりに言ってくれたことが嬉しかったし、とても有り難かった。
最後にO専務は「Aさんがいなくなっちゃうけど、これから何かあったら直接俺に言ってくれて良いからね」と有り難いご配慮も頂いた。
言いにくいことを言えるために
『言いにくいことを言う』
こればっかりしていたらお客様にとって嫌なヤツになるだろう。
大事なのは言いにくいことも言える関係作りを日ごろどれだけできているかということだ。そりゃ、遠くから朝早くに会いに来てくれるような間柄だ。それだけでもすごいと思う。A部長とO専務は昔からの深い付き合いがあったがために、言いにくいことも言えるし、O専務としてもA部長の言うことに素直に受け入れられるのだろう。
また、何でもかんでも言っていい訳ではもちろんない。
自分の役割にすれば腹を括れる
『言いにくいことを言う』
これを私が営業としての役割と考えるようにしているのは、自分の中でそう決めておけば、何か言わないといけないことがあっても腹を括れるからだ。
「言いたくないけど、これが俺の仕事やから仕方ないわな」と半ば諦めて、意を決してお客様に伝える。
そう割り切らないと『言いにくいことを言う』ことからきっと逃げてしまう。自分で言わない言い訳探しをしてしまいそうだ。
そのように、自分の心の弱さを封するように自分の役割と心に決めている。
実際、課題に真摯に向き合ってお客様に『言いにくいことを言う』ことをしていた結果、前職を退職する前、お客様に「客に対して物怖じせず貴社としての意見を伝えてくる姿勢に感心してました」と皮肉なしに褒めていただいたこともあるので、あながちこの考えは間違っていないと思っている。
この考えは家庭でも
家庭内でも妻と面と向かって伝えるのが億劫なことであっても、ひずみが大きくなる前に、時に言いたかないけど言わねばならぬときがある。それが家の中でも自分の役割なのだから。
『言いにくいこと言う』
本当に言うことが正しいかの精査や、言うことへのエネルギーが必要だが、ひずみが大きくなる前に、課題から目を背けないように、これからも心掛けたい。
A部長が最後にぶっこんでくれたように。